君の声が聞きたい

そして私は鷹斗さんを忘れるために心理療法をやって記憶がなくなった。
それからのお父様は厳しかった。
特に男の人には………。
私は何も知らないでお父様はもともと厳しいんだって思ってた。
だけどそれは………。

「私の………ため?」

全部………今まで全部………私のためだったんだ………。

「ひっ、うっ………」

やっとわかった。
そして隼人君は鷹斗さんの弟。
いつも見ていた。
私のことを。
そして私も………隼人君を見ていた。

「お父………様、私………っ!!」

今、全てを思い出した私は忘れたくて心理療法をやった意味なんてないじゃんかと………心の底から思った。

「琴音………っ!!」

「お父様………私………」

あなたに知らないうちに甘えていたんですね。
ずっと………あのときからそうだったんだ………。
お父様は本当に………優しいかたですね。

「琴音………全部思い出したんなら俺と一緒に来てほしい!兄さんは今………引きこもってるんだ。だから一緒に来て、兄さんに手を差しのべてくれないか?」

「………鷹斗さんに?手を差しのべる?」

何で………?何で鷹斗さんが引きこもってるの?
傷つけられたのは私であってあなたじゃないのに………。

「無理だよ………。行けない。会うのが………怖いもん」