アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚

「珍しく、五貴さんから会議の資料を、渡されたの。」

「ほう。本当に珍しい事ですね。」

「でしょう?」

私が入社して、会議の資料を作るようになってから、だいぶ経つけれど、こんな事は初めてだ。


「ところがね、その五貴さんから貰った資料が、どこかに行ってしまったのよ。」

「へえ。紙に足でも生えたのでしょうか。」

真面目な顔でボケる林さんに、私は口をあんぐり開ける。

「これは、失礼。」

私は気を取り直して、話を続けた。

「でもね、いくら探してもないのよ。床にも落ちてないし、他の資料とも混ざってないし。」

「不思議な事も、あるものですね。」

「うん。」

お替りのビールを林さんに注いでもらいながら、私はもう一度、あの時の事を思い出した。


確か、五貴さんの資料は、一番上に置いてあったはず。

何かの拍子で飛ばされたのなら、床に落ちていても、おかしくないのにな。

首を傾げた私を、林さんは見逃さなかった。