「ん………」
携帯の着信音で目が覚める。時計を確認すると、時刻は午前6時半。いつも起きる時間より少し早い。重い身体を動かして携帯を手に取ると、発信相手は大智だった。
「もしもし…大智?」
『朔…お前もう体調は平気か』
「体調?平気だけど」
『じゃあすぐ起きてニュース見ろ』
「ニュース…?分かった」
急に起こしてきてニュース見ろだなんてどういうことだろう。まさか大智の好きなアイドルが結婚したとか、くだらないことじゃないだろうな。
そんなことを考えながらリビングに行くと、ちょうど母さんと賢人がニュースを見ていた。
「母さん、おはよ…」
「朔、コレ見てちょうだい」
朝の挨拶を遮って、母さんは震える声でそう言ってテレビの画面を指差した。
怪訝に思いながらも俺もニュースを見て、そこで初めて俺は目を見張った。
『今朝、都内の私立高校で女子生徒の遺体が発見されました』
映っていたのは、俺の通う高校だった。
『死亡したのは、この高校に通う 田中莉央さんです』
画面には、クラス替えの時に撮ったクラスの集合写真が、莉央の部分だけ切り取られて映っていた。
「なっ…………」
ぐわん、と頭の中を掻き回すみたいに目眩がした。
全身から力が抜ける感覚がして立っていられなくなったのを、賢人に支えられた。
『死因は転落死で、警察は自殺の可能性を視野に捜査を続けています。遺書などは見つかっていません』
何を言ってるかが分からない。
自殺……?莉央が………死んだ?
「朔……莉央ちゃんて貴方とよく一緒に居る…」
おなじように信じられないという顔をした母さんが言う。回らない頭で頷くと、母さんは「ああっ」と悲壮な声を漏らした。
「お、俺……学校に行ってくる」
行ったところでどうにもならないが、何故か行かなきゃならないような気がした。
適当に制服を着て、リュックの中身も鏡も見ずに家を飛び出した。母さんが何か叫んでいたような気もするが、構っていられなかった。



