ココロの好きが溢れたら



教室の窓から見える校門に、見覚えのある人物の姿があった。

遠くてはっきりとは見えないが、間違いない。


「悪い、先に帰る」

「えっ、ちょ…晴翔!?」


急いで教室を飛び出し、下駄箱で上履きからローファーに履き替えて校門に向かう。


門に寄りかかるようにして立っていたのは、ふわふわとした柔らかい髪をした他校の女子。

通りすがる男子生徒がチラチラと彼女を見ていく。

中にはわざと何度も通りすがる男もいて、その様子を見て急いで来たんだ。


「陽毬」


初めて名前で彼女を呼ぶと、彼女はこちらを振り向いた瞬間とても嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。


その笑顔に一瞬胸が高鳴ったが、すぐに陽毬の周りをウロウロとしていた男達を睨み付ける。


「お前、なんでここにいる?」

「昨日、お母さんにハルと必要なものを買いに行っておいでって言われてたの」


必要なもの?

あぁ、箸とかコップとかか。


てか、それより。


「ここで待ってたら危ないだろ」


危うくうちの生徒にナンパされかけてたからな。

俺がもう少し来るのが遅れてたら、確実に連れてかれてたぞ。


「え、危ない?」


…おい。

無自覚か、こいつ。