ココロの好きが溢れたら



よく見れば、彼女が今いる場所は俺のために作られたトレーニングスペースで。

その足元にはストレッチマットが敷かれている。

それもきっと彼女が敷いたんだろう。


サイダーを飲み終えてストレッチに向かえば、彼女はその場から離れてテーブルで何かを熱心に読み始めた。


あまりにも真剣な顔をして読んでいるから、ストレッチをしながらその横顔をずっと見ていた。


……何をそんなに真剣に読んでんだ?


集中しているのか、俺の視線に全く気づくことなく読み続ける彼女。


一度だけ彼女が席を立ったので、悪いとは思いながらも読んでいたものを覗いてみた。


「っ…!」


そこに書かれていたのは、俺の習慣の数々。

俺でさえ細かすぎると思う習慣まで、メモ帳いっぱいにぎっしりと書き込まれていた。


こんなものを、あんな真剣に読んでたのか?


「…アホか、あいつ」


普通、あんなに自分が怯えるほど拒絶された相手にこんなことするか?


俺ならしない。

もう2度と近寄りすらしないだろう。



そしてふと気づいた。

さっき、俺が言葉を返しただけで。

あいつが用意したサイダーを飲んだだけで。


たったそれだけの事で、彼女がとても嬉しそうに笑っていたことに。


「……少しやり過ぎたな」


最初に会ったあの時。

とても酷く彼女を拒み、怯えさせてしまったことを少しだけ後悔した。