ココロの好きが溢れたら



反射的に振り返ると、「やってしまった」とばかりに口元を押さえる彼女の姿があった。


きっと俺のことを「ハル」と呼んでしまったことに後悔したんだろう。


どうやら、あの時俺が拒絶したことをしっかりと理解してくれたみたいだ。


でも、いつまでもそうしてられるのは面倒臭い。


呼びかけに振り返ってしまったのだから、聞いてやるしかない。


「…何」


必要最低限の言葉で聞き返すと、彼女は「冷蔵庫にある紙コップ」と言った。


紙コップ…?


再び冷蔵庫に目を向けると、確かに紙コップが入っていて。

それを手に取ってみた俺は驚いて、思わず声を発した。


「え……」


小さく呟いた言葉だったから、きっと彼女には聞こえていなかったと思う。


紙コップにはサイダーと氷が1つ入っていた。


俺が風呂上がりにサイダーを飲むこと。そこにひとつだけ氷を入れること。


それを全て知っていて、彼女は予め用意していたらしい。