ココロの好きが溢れたら



「この後どうする?なんか食って帰るか?」


練習後、学校を出たところで俊太がそう言ったが、少し考えて俺はその誘いを断った。


「悪い。もう遅いし俺帰るわ」


「珍しいわね、晴翔が時間を気にするなんて」


確かに。

今までの俺なら、迷わずに飯を食いにいってた。

けど、今の家にはあの女がいる。


一緒に住んでいる以上、嫌いな女とはいえ夜に1人にしておくのは気が引ける。


これからは、2人の誘いも断ることが多くなりそうだ。


「あー、なるほど…そういうことか」

「え?どういうこと?」


事情を知っている俊太はすぐに察してくれたらしい。


「んじゃ、また明日な!」と、俺が婚約者と同居していることを知らない沙織を無理矢理引き連れて帰っていった。


別に同居のことを内緒にしているわけじゃない。

でも、なんとなく沙織には言わない方がいいと思った。

沙織は意外と口うるさいところがある。

同居が知られたら色々と口を挟んできそうだからな。


さて…。

泣いてんだろうな、あの女。


家に帰ることがこんなに嫌に思うのは初めてだ。