ココロの好きが溢れたら




高校入学前の春休み。


クライミングジムで体を動かし、ファミレスで昼食をとっていた時。


「お前、なんでそんなに自分の婚約者のこと拒絶すんだよ?」


幼なじみで俺と同じスポーツクライミング部の俊太が、毎日のように聞き飽きた質問をしてきた。


「会ったこともねぇ他人に構ってられるかよ」


そんなことに構ってる時間があるなら、その時間を練習に当てた方が有意義だ。


会ったこともなければ、いつ会うかも分からない相手に本気で恋するほど俺はバカじゃない。



「お前、それ彼女ほしくてもできない野郎共の前では絶対に言うなよー?ぶん殴られるから」


俺からしたら、そんなに欲しいなら譲ってやりたい気分だけどな。


「婚約者の名前、陽毬ちゃんだっけ?めちゃくちゃ可愛いのになぁ」


俺の携帯を勝手に操作し、婚約者である澤北陽毬の写真を見ながら俊太が呟く。


確かに、婚約者の外見はかなり整っている。


綺麗系というより可愛い系の彼女は、二重瞼のぱっちりとした丸い目をしている。

形のいい唇と鼻に、ほんのりとピンク色の頬。全てのパーツが小顔な彼女の顔に見事に配置されている。


背中の真ん中あたりまである、ゆるくウェーブがかった天然のロングヘアーがより彼女をふわふわとした女の子のイメージを作り出していた。