ココロの好きが溢れたら



それから学校に登校した私は、さっそく真緒に話を聞いてもらおうと、朝から奈緒を廊下に連れ出した。


「なによ、朝っぱらから」


「聞いて真緒!色々聞いて!」


「呼び方戻ってるし…。ってか、聞くから服を引っ張るな!伸びる!」


なんだかんだ言って真緒は優しいんだ。

文句言いながら、いつも最後には私のわがままを聞いてくれる。



私は周りに誰もいないことを確認して、昨日の出来事を真緒に話した。


一緒の家に2人で住むことになったこと。

ハルが私を拒絶していること。

それでもやっぱり、ハルのことが好きなこと。


全部話したんだ。



「新築の一軒家ねぇ…やっぱぶっ飛んでるわ、陽毬の親」


「真緒、1番聞いて欲しいのはそこじゃないんだよー!」



親の話じゃなくてっ!

普通「え!?一緒に住む!?」ってならない!?

そこに驚くよね!?

しかも私が拒絶されてることもスルーですか!?



「だって、フォローするとこなくない?あたしだってその人と同じ立場なら陽毬のこと遠ざけるね」


「なんで!」


「鬱陶しい、騒がしい、やかましい」



うっ…。

真緒、心にグサッと刺さったよ…。

グサッとどころか貫通したよ…。



「…じゃあ、やっぱり邪魔しないように大人しくしてた方がいいのかな…」



私が好きって言わなければ。

ハルをサポートすることに徹していれば、ずっと一緒にいられる。


拒絶されて捨てられるより、そっちの方がよっぽどいい。



「気持ち悪い」


ちょっと真緒さん。

これ以上私の心を抉らないで…。


「気持ち悪いってひどいー…」


「だって、そんなの本当の陽毬じゃないでしょ」


え?


「偽って側にいたって、どうせいつか本当のことがバレて捨てられるって。

陽毬がアホな子なのは変わらないんだし」


真緒…フォローしてるようでフォローになってないよ…。


「でも、真っ直ぐで裏表がなくて、明るくて一生懸命なのが陽毬でしょ」


真緒…。



「そのままの自分でぶつかってみれば?そしたら、相手もそれを受け取めるしかないんだから。…頑張れ」


「真緒…大好きっ」


「はいはい」



そうだね。

真緒の言う通りだ。


本当の私でぶつかって、ハルに私を知ってもらう。


大丈夫。

私達はまだ始まったばかり。

まずはお互いを理解するところから、ゆっくり始めてみよう。