ココロの好きが溢れたら



彼に向かっていく足が自然と早くなっていく。


「ハルっ…」


その勢いのままハルに抱きついた。

身長が低い私はハルの胸くらいまでしか身長がないみたいだ。


「会いたかった……ずっと…」


ギュッと抱きつけば、爽やかなシトラス系の香りがする。


やっと会えた喜びと、やっと感じることができた体温に涙が溢れる。



「よかったわね、ハル。こんなに可愛い婚約者から愛されてて」


「陽毬、抱きつく前に挨拶でしょ」



お母さんと美智子さんの声に、はっと我に帰った。


そうだよね。

婚約者でお互いのことは写真を見て知ってるとはいえ、初対面には変わりない。


ちゃんと挨拶しないと。


そっと抱きついていた腕を離して袖で涙を拭う。


「澤北陽毬です。よろしくお願いします」


そう言ってペコリと頭を下げたのだけれど。


え…。


顔を上げたわたしの目に映ったのは



「………」


「ハ、ハル…?」



無表情……いや、冷たい目をして私を見下ろすハルの顔だった。