「なに、よ…っ、ついこの間まで、晴翔と会ったこともなかった……、晴翔のことを何も知らないあなたなんかに……っ!
親の決めた婚約者ってだけで、ずっと1番近くにいた好きな人を取られるあたしの気持ちが、あなたに分かるわけない!!」
沙織ちゃんの悲鳴にも似た涙ぐむ声が、私の胸を突き刺す。
でも、同情はしない。
してはいけない。
そんなことしたら、気持ちをぶつけてくれている相手に失礼だ。
「沙織ちゃんだって私の気持ちは分からないよ!!
好きなのにっ!会いたいのに会えない!!いつも画面に写るハルを見ることしか出来なかった私の気持ちなんか分からないよ!!」
気持ちをぶつけてくれる相手に対して返すのは、自分の心からの気持ち。
本音をぶつけ合うこと。
「ずっと近くにあたしはいたの!!それを急に取り上げられた悔しさと寂しさが分かる!?」
「じゃあ初めて会った好きな人に冷たい目で嫌いだって拒絶された絶望と苦しさが沙織ちゃんに分かるの!?」
「あたしだって晴翔の婚約者になりたかった!!」
「私もずっと大切にしてくれる幼なじみに生まれてみたかったよ!!」
沙織ちゃんと私はどこか似ている。
状況は違うけど、とても似ているんだ。
ずっと傍にいてハルを思ってた沙織ちゃん。
離れていてもハルを思ってた私。
幼なじみゆえに気持ちに気づいてもらえなかった沙織ちゃんと、
婚約者ゆえに本人の意思なく結ばれる約束をされてた私。
ハルと結ばれる約束が欲しかった沙織ちゃん。
ハルと沙織ちゃんの間にある強い絆が欲しかった私。
正反対なのに似ている。
自分にないハルとの繋がりをお互いに羨んで、苦しんで。
羨んでも手に入らない苦い現実と向き合うしかなくて。
全て受け入れて残るのは、やっぱりハルのそばに居たいと望む強い気持ち。
それを今、お互いにさらけ出している。



