ココロの好きが溢れたら



「陽毬っ!!」



家に着き、靴を乱暴に脱ぎ捨てる。

リビングへ続くドアを開けると、陽毬が驚いた顔でこちらを振り向く。

陽毬の瞳からは涙が溢れ、頬を伝っていた。

必死に涙を隠そうと拭う陽毬のその姿に、どうしようもなく胸が締め付けられる。


「ハ、ル……早かった、ね。あの、私っ……」


無理して気丈に振る舞う陽毬は痛々しくて、何故か俺が泣きそうになった。


もういい。

もういいんだ、陽毬。


陽毬の気持ちが痛いほど伝わってきて、泣きそうになる。


無理に笑おうとするな。

強がらなくていい。


陽毬の腕を掴み引き寄せ、そのまま震える小さな体を抱きしめる。



「……好きだ」



自然とその言葉がこぼれた。

好きが溢れると、頭で考えるよりも先に体が動くのだと初めて知った。



「っ、ハル…?」

「ずっと待たせてごめんな」



強く抱きしめて、もう一度好きだと伝える。

たくさん傷付けた。

ずっと待たせてしまった。



陽毬……。



「好きだ」



だから、もう



「ふぇ……っ……」



我慢しないで、泣いてほしい。



「うぇー…んっ……ひっ……うぁああ……っ」