ココロの好きが溢れたら



脱衣所を出て先輩と集合場所である座敷へ向かう。

女子組はまだ来ていないみたいだ。


「先輩、髪乾かさなくていいんですか」

「おう。舞子に拭いてもらう〜」


あ、そう。

相変わらず仲良しで良かったですよ。


「お前、サイダー買うんだろ?俺のジンジャーエールも頼む」

「分かりました」


荷物を置いて飲み物を買いに注文口へ向かう。

俺はここでもいつも通りサイダーを飲む。ただ、家ではないからいつも氷がいっぱい入ってんだよな。

ここに来る時はいつも先に風呂から上がった奴が飲み物を頼んでくれてるから言えなかったけど、今日は氷ひとつで頼んでみるか。


そう思って注文口で店員に言おうとした時。


「あ、サイダーですよね!ご注文は伺ってますよ。他に何かご注文はございますか?」


え…伺ってる?

しかもなんでサイダーを頼むって知ってるんだ?


少し混乱したせいか、話を聞く間もなくジンジャーエールを頼んで終わってしまった。


それから店員が手渡してきたサイダーを見て驚く。


「これ……」

「氷がおひとつでしたよね。彼女さんから先にご注文がありまして。あなたが来たら、これで出してあげてくださいって」


陽毬が…?


「ふふ、可愛らしくて素敵な彼女さんですね」


店員はそう言って仕事に戻って行った。

先輩が待つテーブルに戻りながら考える。


確かに俺がサイダーを氷ひとつで飲む習慣を知っているのは陽毬しかいない。


でも、あいつ…いつ注文しに…?


そこまで考えて、そういえば…と思い出す。

ここに着いてすぐに陽毬がどこかに行っていた。

どこに行っていたのかと聞いたら…。


「あの時確か…サイダーの相談をしにって言ってたか?」


あの後すぐに先輩達が来て、よく聞く前に話が中断してしまったけれど。


あの時か……。

あー、マジかよ。