「なりかけって曖昧だな。はっきりしてやんないと、陽毬ちゃんが辛いだけだぞ。何か好きだって言いきれない理由でもあんのか?」
理由…。
「陽毬は最初に会った時から俺が好きだって言ってくれて。あんなに冷たく突き放したのに、今も俺のそばに居てくれる」
嫌いだ、と。
陽毬のことを知りもせず、印象だけで決めつけて酷く拒絶した。
最低なことをしたと思う。
それでも陽毬はそんな俺から逃げることもなく、真正面から向き合ってくれた。
本人は隠してるつもりなんだろうけど、今も陽毬の目や態度から俺への気持ちが伝わってくる。俺が好きなんだと、言葉にはしなくとも伝わってくる。
だけど。
「陽毬はどこまでも俺のことを優先して考えるんです。もし、陽毬とちゃんと付き合ったとして……それでも陽毬はきっと、俺に遠慮すると思うんです」
陽毬は俺に遠慮している。
初めて会った時、陽毬は自分から俺に抱きついてきた。
けれど、今の陽毬は決して自分から俺に触れてこない。
ストレッチの時に手を繋ぐことはあっても、それも俺から。
たまに俺の服の袖を握ってくることはあるけど、無意識に遠慮しているのか肌には触れてこない。
「好き」と言う言葉も言わない。



