ココロの好きが溢れたら



店員さんが優しそうな中年女性でよかった。

話しかけやすいもんね。


「あ、あの。ここってサイダーはありますか?」

「はい、ありますよ!」


よかった。あった!

じゃあ持ってきたサイダーは空ける必要はないね。


「グラスの大きさはどれくらいでしょうか?」

「ちょっと待ってくださいね。……えーと、これくらいですよ」


店員さんが見せてくれたのは、いつも使ってるコップより少しだけ大きいグラスだった。

流石にジョッキくらいの大きさだったら困ったけど、これくらいなら……。


「すみません。ご迷惑ではあると思うのですが……もしこの写真の彼が注文にきたら、グラスに氷をひとつだけ入れてサイダーを渡してあげてくれませんか?」


我ながら無茶な注文をしているとは思う。

断られることを前提でハルの写真を見せると、私の予想とは裏腹に店員さんから「あぁ、あのイケメンくんじゃない」という言葉が返ってきた。


「え…知ってるんですか?」

「ええ。クライミング部の子ですよね。コーチはここの常連ですし、選手達もよくうちに来てくれますから。この写真の彼のこともうちの若い女の子達がよく『すっごいイケメンの人がいる!』って盛り上がっているんですよ」


そっか。

ハルは何度か来てるんだし、昔からクライミング部が利用してるならコーチや選手達と顔見知りにもなるよね。



「それで、彼が来たらさっき言っていた通りにサイダーをお渡しすればいいんですね?」

「あ、はい!お願いできますか?」

「大丈夫ですよ。お任せください」


店員さんは笑って私のお願いを引き受けてくれた。

本当に優しい人でよかった。

私はペコっと頭を下げてもう一度お礼を言い、ハルのところに戻った。