「わざわざ来てくださって、どうもありがとうございます」

高野匠の母親は、隣の県の田舎に住んでいる。周りは山に囲まれ、とてものどかな場所だ。

「匠さんの死因について今調べています。匠さんは、入浴中に浴槽で亡くなりました。てんかんを持っていると聞き、詳しくお話を伺いたいと思いまして……」

藍がそう言うと、高野匠の母親は穏やかな表情で教えてくれた。

「匠は、保育園に通っていた頃に発作を初めて起こしました。それからはずっと薬を飲んでいたのですが、発作が出なくなったので小学校高学年から薬をやめたんです。そして、高校三年生の体育の授業中にまた発作を起こしてしまって……。それからはずっと薬を飲んでいます」

「発作は薬を飲めば起こらないんですよね?」

大河が訊ねると、高野匠の母親は「ええ」と頷く。しかし、薬を飲み忘れてしまうと発作を起こしてしまうのだそう。

高野匠の母親と話していた藍は、部屋をぐるりと見回す。壁には家族写真がかけられ、折り紙の作品が並べられた棚があった。