翌日10時。


予定通りに引っ越し業者がやってきた。
昨日すぐ引っ越しと言われて、そんなの可能なのかと思ったら可能だった。恐ろしい。

当然荷詰めなどしておらず、業者さんに詰めるのを手伝って貰う。元々物の少なかった部屋は直ぐに片付いてしまった。
新しい家は間取りを見るとだいぶ広い。私の荷物じゃ、かなりちまっとしそうだ。



新しい家、マンションの前へ着くと、国山クンが玄関先でウロウロしていた。
子供かっ!あ、子供だった。

私を見つけると、途端に笑顔でこちらにやってきた。
今日も顔が良い。

「こんにちはヒロさん。昨日も顔が良いですね。」
「顔色が良い、だろ。まぁ、体調は悪くないな。むしろ良い。それより、これを。」

口に出た心の声は軽く訂正された。
国山クンから鍵を手渡される。
デフォルメされた、有名な電気ネズミの可愛いストラップが付いている。

「すまない、昨日渡し忘れた。それで、桜木さんが来るのを待っていた。」
「気を使わせてすみません。ありがとうございます。」
「・・・やっぱり、あんたに敬語使われると、なんか変な感じがする。」

えぇえ・・・そんな事言われても・・・

「ヒロさんは上司ですから。」
「・・・じゃあ、上司命令。桜木さんは俺に対して敬語禁止で。」
「パワハラって言葉は知ってるかい青年」
「ふっ。その方が桜木さんっぽくて好きだ。」

・・・満点笑顔の国山クンスマイルは、眩しすぎてチカチカしました・・・