それから話はトントン拍子に進んだ。
実務についての質問、必要スキル、必要経費などなど、お前本当に高校生かと疑う手腕で、本当にトントン拍子に進んだ。

この手腕を持ってして、なぜそれが親子関係に生かせないのか。

答えは単純だった。


「桜木さんのためじゃない。俺のためだ。そこんとこ、勘違いするなよ。」


この子、テンプレガチガチのツンデレだった。
しかもイントネーションに照れがないので、ツンツンツンデレくらいの割合だ。勘違いしたくても出来ない人が大半だろう。
カフェの人達以外に友達がいるかも怪しく思えてきたぞ・・・!

敏腕高校生国山クンの下での仕事は明後日からになった。私のワーカーホリック発言を聞いての判断だそうだ。

マンションへの引っ越しは今度休みが貰えたらかな、と、考えていると。

「明日のうちに引っ越して貰う。業者はこっちで手配するから、見られたくないものだけ適当な箱に詰めといてくれ。」

もう本日何度目の驚きかは数えるのを止めた。
そもそも、見られたくないものなんてないぞ?なんの事かな?
ニヤニヤしながら問いかける。

「・・・あるだろ。その・・・下着とか。言わせるなよ捻くれ者め。」

ガチ照れで言われた下着と言う単語に、流石に申し訳なく思い謝罪し、店を後にした。


その夜、帰宅してすぐ下着をもらったダンボールに詰める。
そうだ、父さんと元上司様に連絡せねば。

まず父へ。父は破産に驚いたが、すぐ働き先が見つかった事に安堵していた。説明が面倒なので、カフェの事務員とだけ伝えてある。

元上司様も、すぐ転活が終わった事に驚いていた。だが、就職先を聞き、納得した様でもあった。

「弘君は僕が担当の取引先のひとつだったんだ。僕も、彼は頭の良い、凄く優しい子だと思うよ。再就職、おめでとう」

あんたも大概いい人が過ぎるでしょ。
また元会社の件に進捗があれば連絡してもらう約束をし、電話を切る。

今日は実に濃い1日だった。いや、昨日もだけど。
そしてまた、眠気はすぐにやってきたのだった。