「その弘さんが、こんなにも熱烈に歓迎しているのです。私は、私たちは、桜木さんが仲間になって下さるのを歓迎しますよ。」
「そう、ですか。」
「今雇われて下さるなら、事務仕事中コーヒーお代りし放題です。いかがです?」
「ふふ、それは超魅力的ですね。」

話しながら書類に目を通したが、破格の条件だ。
給料も待遇もすごく良い。借りれるマンションもいわゆるファミリータイプ、家族で住む事を想定した広さだし、手当てが出る事を考えると凄く安いと思う。

何より、私は西辻さんのコーヒーをすごく気に入ってしまった。
国山クンの世話係兼事務員、やってやろうじゃないか。

カバンから使い古したペンを出す。
昔、就職祝いでもらったボールペンだ。

「おや、もうご決断されたのですか?」
「今契約しないと、コーヒーお代りし放題が付かないのでしょう?元よりワーカーホリックなんです。喜んで契約させて頂きますよ。」

「本当か!?あんた、雇われてくれるのか!?」

キッチンに居たと思った国山クンが、キラキラした、年相応の目で私を見ていた。


「私は『あんた』じゃないです。桜木朔です。よろしくお願いしますね、ヒロさん」

「! あ、ああ!こちらこそよろしく頼むよ、桜木さん!」


お父さん、天国のお母さん、元上司様。
会社が破産して次の日、高校生に拾われ転職先が決まりました。