バタン。と屋上のドアが開いた音がした
ドアの方向に目を向けると、長い黒髪を揺らしながら雪姫が歩いてきた
あたしは、焼きソバパンを持っている手と反対の手を振った

「おーい雪姫ー!」
「ゴメン遅れた」
「いいよー」

雪姫は静かにあたしの隣に座ると、青色のお弁当箱を開けた
何か雪姫が(いつも無表情だけど)ムスッとして見えたから笑ってみた

「何、春樹に「姫ー」とか言われたの?」
「正解」

綺麗な玉子焼きを口に入れながら、一言答えた

「やっぱりー!」
「何とかしてよ。同じ部活でしょ」
「いやー。でも何だかんだ言って仲良いよねー?」
「良くねぇよ」
「…ハイ」

雪姫、時々本性が出るのが怖いんだよねー
あたしが冷や汗を流してパンを頬張ると、雪姫が何かを思い出した

「…そうだ。爽樹。ウチのクラスで爽樹のメアド欲しいって子が居たんだけど」
「へえー。女子?」
「男子。メアド渡してって頼まれた」

雪姫がブレザーの内ポケットから白いメモ用紙を差し出した
あたしは片手で受け取って、ケータイを出して操作した

「はーい。ありがとー…」
「爽樹のこと、好きなんじゃないの」
「あたしは雪姫と違って男子ウケするようなキャラじゃないのー」

ぴ。ぴ。とアドレスを登録した
そう。雪姫は外見も全部めっちゃいいから男子にモテモテだけど
あたしはハイテンションで明るすぎてモテるようなキャラじゃないのです

「…てか、爽樹、それ」
「ん?」

雪姫が、あたしのライムグリーン色のケータイを指差した

「没収されたんじゃないの」
「…あー。そーそー」

授業中にマナーモードにするの忘れて没収されたのでした

「返してもらったんだ」
「いやー…取って来た!」