ヴー ヴー ヴー

「…」

夜中、12時頃に読書をしているとケータイのバイブ音が響いた。ディスプレイを見ると【藁間 雪姫】と出ていた。
珍しいな。

「…もしもし」

受話器の向こうから、声がした。

《もしもし、寝てた?》
「別に」
《聞きたい事が有るんだけど、時間大丈夫?》
「大丈夫だけど、珍しいな」
《まぁ…。慧、最近、男に話しかけられなかった》

男。と聞いて、真っ先にあの男が脳裏に浮かんだ。
スーツを着た、穏やかな顔つきの。
話を聞くと、どうやら正真正銘の本物だという、あの男。

《…スーツ着た、ホストみたいな男》
「ああ。知ってる」
《慧、何を言われた?》
「いきなり、「協力しろ」…で、話を聞いた」
《聞いたんだ。私も声かけられたんだけど、目的は何》
「俺と藁間の他にも、陸と卓真と春樹と高城が必要らしい」
《それは知ってる》
「…それは、卓真達は知ってんのか?」
《爽樹以外は。陸は爽樹に気付かれないようにしてる》
「そうか…陸は何かあったのか?」
《…爽樹が、あの男の敵に捕まった。らしい》
「?」
《昨日の夜の話》

高城が捕まった。
これは、危険な話だな。
高校生が首を突っ込む話じゃない。

《それで…ホストみたいな男が、爽樹を捕らえた男を…殺したらしい》
「殺した…!?」
《そう。銃で頭を…そして、陸に刀を渡したらしい》
「…陸に人殺しをさせる気か?」
《さぁ…それも、かなりの名刀》

あの男…俺の友達に何をさせようとしてる?