「犯人の部屋は6階の602号室。被害者の部屋は4階の508号室」
「…うん」
「…分かったか?」
「…何が?」
「………」

何が。じゃねぇよ

「…犯人の部屋からじゃ真反対の部屋の被害者は見えねぇってことだよ」
「……あー!!なぁーるほどー」

ここまで言わねぇと分かんねぇのか…

「で、女の犯人は力が弱かったから自分の力を使わないトリックで被害者を落としたんだよ」
「…力を使わない?」
「……使ってねぇだろ。蝋燭が燃えて短くなると、蝋燭の下の部分に巻きつけた犯人を吊るしたロープが千切れて、自動的に被害者は落下すんだよ」
「へぇ~~」
「女がその時間、部屋に居たのも監視カメラで確認されてるし、犯人は被害者が落下するのを目撃するのは有り得ないってことだよ」
「………慧、頭いいじゃん…」
「誰でも分かる」

そう言い残して、本を友達の手から取り上げて立ち上がった
授業サボってるし、見つかったら面倒だからな
まぁ、春樹(ハルキ)なら大丈夫だろう
俺は―


別に授業を一回飛ばす位なら大した問題も無い。多分。

「…にしても、馬鹿な手使ったな…」

あんなトリック使わなくても、もっと簡単な手段が有っただろう。



柴崎 慧-シバザキ ケイ-
2年A組
天才戦略家