「柴崎 慧君だよね?」
「…そうですが」

登校中、本を読みながら歩く俺の進路を塞ぐ男が居た。
誰だと思って顔を上げると、朝の高校生の通学路には似合わないスーツを着た男が立っていた。
えらく優しい口調で、俺の名を口にした。

「俺に力を貸してくれないかな?」
「仰っている意味がよく分からないんですが」

穏やかな顔が、真剣な顔つきに変わった

「君達に、俺の下で働いてもらいたいんだ」

「君達の学校を、救うために。ね」
「はい…?」

ぱたん。と本を閉じた
春樹といい、この男といい
俺の読書を邪魔するのが趣味なのか

「詳しくお話を、聞かせて頂けますか」
「うん。いいよ」

男が、穏やかな顔に戻った

「でも…慧君、学校に遅刻しちゃうけど大丈夫?」
「1回くらい平気です」
「羨ましいなー。俺は授業1回でもサボったらついてけなくなってたのに」