「ひーめーっ」

HRの後、教室を出ようとしたら春樹が後ろから叫んできた
昨日蹴られらのに懲りない馬鹿
走ってきた春樹をそのまま受け止めてネクタイを掴んで捕まえた
そして素早く教室の外の壁に押し付けて脛を一蹴り

「ィ…ってぇぇぇッ!!!!」
「昨日も言った」

バッと振り返って階段を降りた

私は自分の名前があまり好きじゃない。
母がこんなにメルヘンな名前を付付けたんだけど。
どこの世界に「雪姫」なんて名前の女子高生が居るんだ。
それに、私って嘘吐きだし実際おしとやかなタイプじゃない。
あの馬鹿に「姫」なんて呼ばれなかったら蹴りとかしないけど。そこまで暴力的じゃない。

「ゆーきひめっ!!」
「爽樹…」

振り返ると、階段から爽樹がスカートを揺らして飛び降りて無事に踊り場に着地した。
どんな跳躍力してるんだこの子は。

「雪姫、放課後は!?」
「…特に何も」
「ふーん…」

私は帰宅部。時々美術部や演劇部の助っ人として部活はするけど。
バドミントン部エースの爽樹みたいな正式な部員じゃないから、普段は今日みたいに暇だ。

「バド部さ!顧問が忙しくて早く終わるから一緒に帰らないー?時間的には?」
「…多分大丈夫……」

爽樹の顔がパアっと明るくなった瞬間、私の黒い携帯にメールが入った
メールを見ると、母からだった。

「……ごめん。爽樹」
「へ?」

過保護な親なんだから…