「おっすー陸ーー」
「卓真ーっ!!」

切り刻まれた畳表を片付けていると、木製の古びた引き戸を開けて、卓真が制服のまま道場に入ってきた

「今、邪魔なカンジ?」
「いやー全然。今休憩中」

両脇に斜めに切り口の広がった畳表を挟んでずるずると道場の隅に置いた

「おー、何か今日はいつもより多くない?」

斬られた畳表の本数がいつもより多いのが気付いたのか、卓真も手伝ってくれながら聞いてきた

「あ、サンキュ」
「おー」
「何か…先生に今度、皆の前で殺陣披露しろって言われて練習中」
「ぉおーっ。どんくらい?」
「えーっと…100人とか…?」
「すっげーじゃん。さっすが特待生!!よかったじゃん!!」
「すごくねーし。よくねーし。腹いてーし」

俺が眉間に皺を寄せてグチると、卓真が隣で笑った
ぁあー。何で俺が…
先生、俺が試合とか発表会で人前に出る時には必ず腹痛くなるの知ってんのに…

「でも陸…武道って全般的に得意だよな」
「あー。んー。まーなー」

そりゃ、小学校入る前から空手とか少林寺とか剣道とか弓道とか…
武道マニアの親父に習わされまくったし
親父、実際強くて練習付き合わされたし

そりゃ、ヘタレでも強くなるっつの!!