そう、中学のあの‘イジメ’は一部の中心人物が離脱しただけで、なくなったわけではない。

私は長い入院生活とリハビリを終え、学校に復帰してからは部活も辞め、事が起こる前にも増して登山兄弟がべったりなことで‘イジメ’はなくなったかと思えた。

しかし、一度そこに存在したものは形がなくなったとしてもそこにあり続け、少しの刺激で姿を現す。

私を標的とした‘イジメ’は、中1の秋に姿を隠し、
中2の夏に再び姿を現した。

きっかけは単純。

‘イジメ’を受けていた一つ下の男の子を助けたことだった。

助けたらまた、自分が標的にされるかもしれない。

それでも、あの苦しみを知ってしまった私は、見て見ぬ振りは出来なかった。

最初はやはり軽い悪口から物がなくなる程度。

しばらくしても、暴力は始まらなかった。

しかし、3年の春。長い間地面の下で眠っていた‘イジメ’の本当の【恐怖】が芽を出した。

脱皮して戻ってきた‘イジメ’は以前のものとは比にならないほど酷かった。

その理由の一つとして、2年のクラス分けで登山兄弟と私のクラスが離れたことにある。

2年の頃は、休み時間には2人揃って顔を出してくれたし登下校も共にしていた。