「あの!ヴァイオレット・ヘーデルヴァーリ……さんですか?」

涙をこぼしていたヴァイオレットは、涙を拭いゆっくりと振り向く。時がようやく動き出した。

ヴァイオレットより二十センチほど背が高くなり、大人びた顔の青年がいた。しかし、ヴァイオレットには誰だか一瞬でわかる。黒いくせっ毛と赤い目はあの時のままーーー。

「ルート!!」

ヴァイオレットはルートヴィッヒに抱きつく。感情が止めどなくあふれ、流れ、ヴァイオレットは子供のようにルートヴィッヒに泣いて甘えた。

「すっかりレディーになったんだね。君のことは聞いていたよ。でも、他国に留学していたから逢いに来れなかったんだ」

ルートヴィッヒは、赤い顔をしながら花をヴァイオレットに渡す。それは、真っ赤なチューリップの花。花言葉は、「愛の告白」と「真実の愛」。

「今でも僕は、あなたを想っています。あなたにふさわしい男になるために一生懸命勉強しました。……僕と、結婚を前提にお付き合いしてください!」