ヴァイオレットは思う。ルートヴィッヒは約束を忘れたのではないかと、彼はもう結婚して家庭を持っているのではないかと。

そう思うと、自分は捨てられた気がして胸が痛むが前に進められる。

ダリア夫人は、リボンやレースなど可愛い服が好きだ。よくヴァイオレットにも可愛らしいドレスを着せていた。ヴァイオレットが結婚する時も、ウエディングドレスはリボンやレースで飾られているのだろう。

もう、この想いは捨てようかしら。そう思いながらヴァイオレットは歩く。目の前の世界がぼやけていった。

カウンセラーになったヴァイオレットは、今では多くの人に名前を知られている。ルートヴィッヒが会いに来てくれるかもと信じ続けていた。しかし、ルートヴィッヒから手紙が来ることも、会いに来ることもなかった。

大きくなったルートヴィッヒは、きっと今のヴァイオレットではわからないほどたくましくなっているのかもしれない。

ヴァイオレットは苦い思い出を振り返る。