「あなたも二十五歳だし、そろそろ結婚をするべきだわ。あなたのことを話したら、何人もの男性が「ぜひ、お見合いをしたい」と言ってくださったわ。みんなお金持ちで、あなたに不自由はさせないそうよ」

ヴァイオレットは、またかとため息をつきたくなる。最近ダリア夫人に呼び出されれば、いつだって結婚の話だ。

ダリア夫人には本当の子供がいない。そのため、ヴァイオレットを実の娘のように育ててくれた。会社を継いでくれる男性と結婚してほしい、そんな思いが強いのだろう。

「お母様、私は結婚をしたくないのです。お母様の思いはよくわかります。しかし、私はカウンセラーとして働くことが楽しいのです」

「別にカウンセラーをやめろとは言っていないわ。ただ、早く結婚をして子供を産んで私たちを安心させてほしいの。天国のあなたのお母さんもきっとそう思っているわ」

ダリア夫人にそう言われ、ヴァイオレットは黙り込む。そこから勝手に話は進み、来月にお見合いをすることが決まってしまった。