カトレアは美人で、将来は女優になることが夢だと幼い頃から言っていた。ローズはカトレアにいつか着てもらいたいと、ファッションデザイナーになることを決めた。

カトレアはアイビーで活躍するのだとローズはずっと思っていた。職が違っても、身近にいてくれると思っていた。

しかし、数日前にカトレアとカフェでお茶をした時に言われたのだ。

「私、アルストロメリア国に行くことになったの。そこの舞台女優として頑張るわ」

アルストロメリア国は、ブーゲンビリア国から遠く離れている。突然そんなことを言われ、ローズは混乱してしまった。

「……でも、ずっとカトレアが追いかけていた夢だから応援したくて。何かをしてあげたくて。でも、悲しくて……」

ローズは顔を手で覆って泣き始める。ヴァイオレットの頭の中に、ルートヴィッヒとの別れが映った。

「ローズさん、あなたはとても立派な人です」

ヴァイオレットがそう言うと、ローズはゆっくりと顔を上げる。ヴァイオレットは優しく微笑んだ。