貴女の瞳に映るのは、私----だけどその奥深くには、誰かいるの?

 彼女のキスを嫌がることなく受け入れる私に、彼女は真剣な顔で言うの。


「ユウ
 私達、一緒に暮らさない
 友達として」

「うん」


 私は、自分が発した答えに驚く。


「一緒に住めば毎日だって
 一緒に居られるね、うれしい」


 並んでエレベーターが来るのを待つ、二人。


「来ないと思ったら押してなかった」

「うそ、ほんとだ」


 押し忘れていたボタンを二人同時に押して、私達は笑い合う。こんなちっぽけなことでも笑い合える、彼女と過ごす楽しい時間----

 恋人のように指と指を絡ませて繋ぐと、実花さんの指がギュッと私の指輪を付け根へと押しつける。----私の指輪、それは彼方とお揃いの指輪。


「いつか、外させてみせる」

「……」

「なんてね

 うそうそ、じょうだん

 そんな顔しないの」


 私は相当、困った顔をしていたのだろう。


「これは、大切で……
 
 もちろん、恋人だとか
 そういう深い意味はないの」

「うん、わかってるよ
 
 私、そういうの気にしないから
 ほんと、冗談だから
 
 ずっとしてていいよ」


 私を好きだという実花さんに対して、他の人とお揃いの指輪をしていることはとても失礼な話。だけど無理なの----彼方の傷にそっと寄りそう指輪、大切な指輪。

 左手、中指の指輪を外す時は来る……?