「……
 ユウさんはこの音楽教室の
 大切なお客様なのだから

 それにこうして会えること自体
 すごいことなんだよ

 私とユウさんが大の仲良し
 だから会えるわけで……」

「ミカさん、レッスンの途中だったら
 わたし、邪魔しないように向こうで
 ……」

「ううん、大丈夫
 
 ちょうど休憩しようと思っていた
 ところだから

 マナちゃん、お茶にしましょう」


 実花さんと過ごす時間が増えた中で私が感じたこと、それは、実花さんは悪気は無いのだろうけれど少し自分本位なところがある。

 確かに、実花さんが言ってることは正しいのかもしれない。先生と言う立場からすれば客人を呼び捨てにすることはいけないと教えるべきだろう。でも、本人である私が良いと言えば、それはどうなるのか?

 それに、『仲良しだから会えるわけで』とは、マナちゃんの立場から言わせれば何とも恩着せがましい感じ。自分のレッスンの時間帯にわざわざ招かねざる客を呼ぶことはなく、練習を邪魔されてとても迷惑な話だろう。

 少し濃いめのアップルティーを実花さんが淹れてくれて、私達は美味しくドーナッツを頂く。


「とってもおいしかったです
 ユウさんありがとう

 今日は、ユウさんに会えて
 わたし幸せです」


 彼女がそう言ってくれたから良かったものの、このような調子だと実花さんはいつか嫌われてしまわないだろうか。私は、それがとても心配。