ディモルフォセカの涙

 愛されない私は、なんて惨めなんだろう----そこから、逃れられなくなって苦しくて苦しくて。そして、受け入れてもらえない歯痒さを、最終的には愛する人に向ける。

 彼方を困らせ傷つける----そんな自分が、たまらなく嫌。


「恋の病は、いったんかかると
 なかなか抜け出せない」

「恋って、しんどい」

「そう思うなら、一度
 その恋から離れてみたら
 
 泣いてばかりじゃ
 自分がかわいそうじゃない
 
 自分を大切にするためにも」

「自分を大切にする」

「そう、それにいつでも戻れるじゃない
 
 好きなものは、どうしたって
 好きなんだから

 さあ、紅茶、もう一杯どう?」

「ありがとう、頂きます」


 この時、実花さんは私にとって、信頼のおけるカウンセラーの先生みたい。

 そして、この音楽教室は私にとって、痛い部分を癒して治してくれる、あの保健室のような温かみのある場所となる。

 今の私には、この場所は必要となる。

 
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『恋するのはやめた方がいいでしょう』

『だって、病むだけでしょう
 
 選び放題に、振り放題』  
 
『掃いて捨てるほどいるって話
 
 入る余地……』


 入る余地などない----

 そこに、入ることを許されていたのは私だけ。