追いかけてきてはくれないんだね、彼方……

 彼方の家を出てからここまで何も考えずにただ道なりに歩いて来たけれど、何とか間違わずに駅まで辿り着いたみたい。

 駅に隣接されたデパートの前に私は立つ。ここで、彼方のお昼ご飯を買っている時はまさかこんなことになるだなんて少しも思っていなかった。あんなにも楽しかったのに……過ぎた時間は戻せない。

 わたし、余計なこと言っちゃった----勢いで告白なんかしなきゃよかったのに……


『バカ、カナタ、みないでよ』


「バカは、わたしだ」


『おまえにだけなら弾いてやれる……』

 せっかく彼方が弾いてくれるって言ってくれたのに。----大好きな彼方のギターを私はしばらく聞けそうにない。

 それは、いつまで……?彼方と顔を合わせて普通で居られる自信がない。

 歩道に立ち止まったままの私の瞳から、後悔の涙が溢れ零れ落ちる。


「ほんと、バカ

 キャッ!」

「イタッ、すみません」


 立ちつくす私の背に勢いよくぶつかる人がいた。それは中学生ぐらいだろうか、とても可愛らしい女の子。


「ううん、私こそごめんね

 こんな場所に立ってて」

 
 そう、建物の入口を塞いでいたのはこの私で、彼女は少しも悪くない。


「ほんとごめんね

 痛くなかった?」

「はい、大丈夫です」

「マナちゃん、ごめん

 譜面渡すの忘れて……

 ユウ、さん?」