交通事故の最中、咄嗟に俺の手を取る義母の手

 血の匂い


 左手に刻まれた傷なんかよりも、もっともっと深い傷

 亡くした者、かえらない----


『カナタ君

 おじさんとおばさんと家族になろう』

『息子のカナタ君よ……
 
 みんな仲良くしてね』


 親戚一同を前にして緊張する僕を見つめる、たくさんの瞳、可愛らしく優しい瞳。

 
 その視線

 僕に降り注ぎ

 僕は今、注目の的----


『わたしは、わたしは……』と、止まることなく次々に聞こえる女の子の声。


 最後に聞こえた、ユウの声----


『わたしは、ユウだよ

 なかよくし、(よう)……

 カナタくん、どうしたの?』


 僕の目から溢れた涙はきっと、嬉しい涙。

 出会えて幸せな涙----



『ユウが誰と付き合おうが俺は関係ない!』


『家族になろう』

 
 
 俺はどうすることもできない。

 それだけは変わらない!