ユウを好きだと言ったくせに俺をけしかける……彼女の考えていることが全く読めない、俺。


「まあ、例えそうなったとしても
 あなたには勝ち目無いと思うけど

 ユウさんを振り向かせる自信
 私にはあるから

 話はそれだけよ、さようなら」


 彼女は言いたいことだけを述べて、俺の前から消えて行く。

 赤い傘に隠れ----消えた。

 
 この場に一人残された俺の脳裏に聞こえる声は、章の声----


『今や彼女は人気者、言い寄ってくる男
 ならたくさん……』


 「女もね」


 彼女の自信漲る、あの瞳----


『……男性は苦手で

 女系家族なので……』


 確かに厄介な相手ではあるかもしれない。


 だけど----


 ----


 その後、空いた座席がちらほら在る、電車に揺られる俺の閉じた瞳の奥に見えるもの

 それはある日の出来事、記憶----

 夕暮れ時の車内、開けた窓から吹く風にボサボサになる金色の髪を押さえる手。


『カナタ、ごめんね
 
 おばあちゃんのところ
 付き合わせて』

『いいよ』

『そう、ありがとう

 ほんと遅くなっちゃったね
 
 帰ってごはんするの面倒
 お父さんのところ寄って……

 キャー、カナタッ、危ない!』