分厚い雨雲と止まぬ雨のせいでぼやける視界、どんよりとした灰色の街を一人帰宅する為に、黒い傘を差し駅へと向かう俺の前に現れたのは、ついさっき消えたはずの彼女、実花。

 赤い傘を差し、コツコツとヒールの音を響かせて、俺の前に立つ彼女はニコリと微笑んで言う。


「偶然ね」

「どうだか……」

「ふふっ、あなたにどうしても
 話しておきたいことがあって
 待ち伏せてたの」

「来るかも分からないのに?」

「そうねぇ、でも来たじゃない」


 傘を打ち付ける雨の音が強くなる中、俺に聞こえる声----


「私、好きなのよ

 ……

 ユウさんのことが」


 その言葉に、俺は一瞬、眉を顰(ひそ)めた。

 思いもしなかった言葉に面食らっているであろう俺の顔を見て、不敵な笑みを浮かべる彼女。


「告白されるのは
 自分だと思ってましたぁ?」

「そう来ましたか」

「ええ、そうよ

 だから悪いんだけど
 あなた達の関係
 ぶっ潰させて頂きます!」

「何言ってる、ぶっ潰すも何も……」

「だって、あなた好きでしょう?
 ユウさんのこと
 
 ユウさんも絶対、あなたが好き
 それだと困るの、私

 欲しいものは手に入れたいのよ

 もし、奪われたくなければ
 早くしたら」


 早く、する……?


「何を……」

「一線を越えるなんてどう?」


 何、言ってる?----