今度は私が差し出したフォークに在るパンケーキを、同じく何の躊躇もなく彼方がパクリと食べた。

 それはいつも食事中、どこでも当たり前のように繰り返される行い。


「おいしい?」

「ああ、うまい」

「あの、本当にあなた達付き合ってないの?」

「うん」

「ああ」


 同時に答える私達に、実花さんは嬉しそうに言う。


「よかった

 あー料理冷めちゃう、早く食べよう」

 
 黙々と料理を食べ進める、実花さん。私は、実花さんの言葉がとても気になる。

 何が『よかった』なのか……?

 ----私達は、後に知ることとなる。


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「じゃあ、私はこれで楽しい時間をありがとう

 ユウさん、またね」


 ご飯を食べ終えた後、実花さんはあっさりと私達の元をあの日のように去って行った。

 長い髪を揺らして----


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「帰るか?」

「私、事務所に戻らなきゃ」

「そうか、送って行こうか」

「ううん、いいよ

 表でタクシーひろうから」

「乗り場まで一緒に行こう」

「うん」


 ショッピングモールの前に在るタクシー乗り場に数台並ぶ、空車のタクシー。


「カナタ、今日はわざわざありがとう」

「別にいいさ、暇だったから

 こちらこそ、飯、サンキュー」