ディモルフォセカの涙

 ショッピングモール5階には、グルメが集まるレストラン街・カフェにフードコートと食する場所がこんなにもたくさん、目移りするほど。
 
 実花さんに案内された場所はとてもお洒落なカフェで、壁の一角はモノトーンストライプの壁紙が貼られ素敵な絵画が飾られてある。アンティークな赤茶色の椅子もとても素敵。

 そこに居るお客様の大半は女の人、正確には彼方と店長らしき男性、子供椅子に座っているあの小さな男の子以外は全て女性。

 彼方にとっては、さぞ居づらい空間だろうと思ってみたものの、案外大丈夫そうで平然といつも通りの彼方がそこに居た。

 隣に座った実花さんの、こちらを見つめる強い視線に気づく私。


「ユウさん、その眼鏡

 この間の雰囲気と違う」

「ああ、これはカナタの眼鏡だから

 カナタありがとう、返すよ」


 彼方の眼鏡は洗練されたシャープなデザインで、私には似合っていなかったみたい----私は自分の鞄からいつもかけている眼鏡を取り出して付けた。


「うんうん、その眼鏡
 ユウさんにすごーく似合ってる

 かわいい」

「ありがとう」


 その後は実花さんの話をずっと聞いていた私、会話に入らずに黙っている彼方のことが気になって、彼方を見つめた。

 料理を待つ彼方は、フワーと退屈そうに欠伸をしては付けてた眼鏡を外し手に持つ。そして、テーブルに肘を付くとその手で頭を支える。親指にひっかけた眼鏡。