ディモルフォセカの涙


「それって、時間かかるじゃん

 もう、そんなだから痩せこけてるんだよ
 
 どうせそのまま夜(ご飯)食べない気でしょう
 
 一人でお店ぐらい入りなよ、いい大人が……」

「大人も子供も関係ない」

「それはそうだけど……」


 ショッピングモール内、言い合いながらも彼方の後ろをついて歩く私の手に、立ち止まった彼方の手がいつものように優しく触れて、繋ぐ。


「何、食べさせてくれんの?」

「そうだな~」


 ----その時だった!私の後方から彼方と繋いでいない方の腕を取り、ギュッと掴む手。その指先には綺麗なネイル。


「あのぅ?もしかして……」


 ファンの人にバレた!どうしよう……。彼方の背に隠れる私に聞こえる声。


「大丈夫、私、ミカ
 
 サンガミカ

 ほらっいつかのライブ会場の、また会えたね」


 また会えるといいね……


「あっ、あの時のミカさん

 どうもこんにちは」


 あの、初めて会った時の雰囲気のままの彼女がそこにいた。


「こんにちは

 やっぱり、さっきのイベント
 ユウさんだったんだ
 
 (ユウさん)じゃないかと思ったんだよね
 
 だけどすごい人でスルーしちゃった、残念」


 彼女はその手に余るほどにたくさんのショップバックを持っていて、休日を楽しんでいた様子。


「ミカさんはショッピングですか?」

「ええ、そうなの……」

「ユウ、誰?」