ピピピーー

 
 朝を知らせるアラームの音で目覚めた私は、ベッドに横たわったまま手を伸ばし、サイドテーブルに置いてあったスマホを手に取ると操作してアラームを止めた。

 音が止むと流れる、朝の静かな時間----私は映る画面に目を遣る。そこには、金髪姿の私と彼方が写ってた。


『カナタ、それ(液)捨てるなら私の髪もして』

『(髪色)抜けるよ、いいの?

 ヨシコさんに怒られないか』

『ううん、大丈夫
 それに怒られたっていいよ

 私もしたい』


 生まれて初めて髪色を変えた日は、ほんの少しの地肌のピリピリと、私の髪に触れる彼方の指先にドキドキしたっけ。ギターを弾く彼方の長い指が私に触れる。

 その後は彼方の、まんま異国の人ですかってぐらいの出来具合に私はクラクラ、ドキドキしっ放しだった。


 お揃いの髪色----写りこむ、お揃いのギターストラップ。


 こうしてる間にも、時刻は毎分毎分過ぎる。彼方を想って生きてきた私の時間、つい最近、手放した時間。


 時刻を見た私は、ベッドから勢いよく出る。昔話に浸っている時間はない!


「急ごう」


 遮光カーテンを開けると見える世界----小雨降る日曜日、今朝の空模様はドヨーンと暗めで、空いっぱい広がる分厚い雲の奥に太陽は潜んでる。


 ----赤い傘、青い傘、黒い傘、色とりどりの傘が差され、空からは町行く人々の姿は隠されている。


 誰が誰……?