ディモルフォセカの涙


「えー、妹かもしれない子に
 そんなにも釣れなくしなくても
 いいんじゃないかなぁ」

「言ってろよ

 俺はこれ飲んだら寝る

 おまえは帰れ」

「はーい」


 淹れ直してくれた紅茶はとても熱くて、早く飲み切ることはできない。

 早くベッドに横になり、眠りたいのに眠れそうにない。

 ボーっと黙ったまま紅茶を啜る俺に、彼女は問う。


「私の話を聞いても、カナタさんは
 本当の家族なんて要らないと
 そう思う?

 ろくでもない家族だもん
 要らないかぁ」


「……」----返答に困る、俺。


「だけど、どっちも大事じゃない?

 私、カナタさんのお母さん知ってるよ」

「母を、どうして?」

「ハルコさんは、私のピアノの先生だから
 
 亡くなられたこと、私は父から
 知らされなかったけど」

「そう……」


 彼女は、俺の母親のことをとても綺麗で優しい先生だったと言う。

 俺を学園に預けた後の母のことを知る、彼女。


「ハルコ先生、私、大好きだったよ

 先生手作りのウサギのマスコットも
 家族の証にと私にも渡してくれた」


 あのウサギのマスコットは、母の手作りだったのか……俺の知らない事を彼女は確かに知っていて、俺達に繋がりはあるのかもしれない。