ディモルフォセカの涙


「かもしれない
 
 だけどどんな理由があったにしろ
 俺は捨てられたことに変わりはない」

「そんなこと言わないであげて
 悪いのは多分きっと貴方の
 お父さんの方よ

 家族を顧みない、あの人のせい」


 あの人……


「俺の父親のこと、知ってる?」


 実花さんのお父さんのバンド『アークトティス』----ユウから、そう確かに俺は聞いた。

 
 この話こそが、本題----


「アークトティス」

「ええ、その名を

 カナタさん、貴方も知っているのね」

「ああ」


----そこは、庭だったかたくさんの花が咲き、その中のひとつ、その花に触れる実の母だと思われし人の声は言う。


「アークトティス

 それは、家族の、大切な言葉

 カナタ、どうか忘れないでね」


 その後、学園で育った俺は、園長先生から自分の生い立ちについて教えてもらった。

 それは、俺を学園に預け数年後に亡くなった母から聞いた僅かな情報。


「俺の実の父親は、昔
 アークトティスというバンドの
 ギターリストだった著名人

 名前は、わからない」

「名前なら分かるわ」


 きっぱりとそう言い放ったすぐ後で、彼女は口ごもる。