ディモルフォセカの涙


「貴方には本当の家族が、どこか
 
 どこかにいるでしょう?」


 俺のことを真っすぐに見つめる彼女の瞳は、俺にはどこか寂し気に映る。


「いない

 そんなものは要らない!」

「いらない?」

「ああ、彼ら(実親)とは血以外
 何の繋がりも無ければ思い出もない

 俺にとっては他人の方が余程
 愛に溢れ、この俺自身を温かい
 眼差しで見つめてくれる」


 俺が見つめる先にはいつも義母は居て、にっこりと優しくこの俺を見守ってくれる。

 普通の10歳の子供よりも大人びた、擦れた俺のことを戸惑うことなくその腕に抱きしめ、頭を撫でてくれる。


「俺は今の家族の前で初めて
 子供であることを許された」

「ハル……はい、紅茶

 実のお母さんとは?」

「ありがとう」


 差し出されたマグカップを受け取った俺は、紅茶を一口飲むとテーブルに置いた。


「さあ

 病気で育てられないとかの理由で
 物心ついた頃には、俺はもう学園に
 預けられていて

 一度だって、会いに来なかったよ」

「会いに行けなかったんじゃないかな
 会いたくても……」


 俺の実母の想いを代弁してみせる、彼女。

 内容が内容なだけに、俺のことを哀れに思ったのだろうか。