ディモルフォセカの涙


「話はまだある、珈琲でいいか?
 
 紅茶もあるけど」


 客人に「何か飲み物を」と、席を立とうとした俺よりも早く彼女は動く。


「じゃあ、紅茶で

 私が淹れます」

「頼むよ、ありがとう」

「いえっ、お湯は?」

「それ、使って」


 勝手が違うキッチンに立って、彼女は考えながらもテキパキと動く。

 紅茶のパックをマグカップの中に準備した彼女は、電気ケトルのお湯が沸くのを待っている。

 流れる沈黙の中----


「私からも聞いていいですか?」


 彼女もまた、昨夜と同じ質問を俺にする。
 

「ユウさんから聞きました
 二人は血が繋がっていないこと

 他人なのに、どうして好きと言わないの?」


 ユウは、俺達家族のそんな深い話まで彼女に聞かせているんだな。

 ユウにとっても、彼女は大切な存在なのだろう。


「俺達は他人じゃない

 よそから見ればそうなのかもしれないが
 他人だなんて思ったことは一度もない」

「好きなのに?

 あなたの感情は家族を想う
 それとは違うでしょう

 どうして閉じ込めるの
 閉じ込めなくてもいいくせに

 今すぐにだって二人は結ばれる

 誰に遠慮があるの?
 
 どうしてわざわざ苦しい想い、するの?」

「誰がなんと言おうと俺達は家族だからだ」