ディモルフォセカの涙


 貴方の住処に近づくことは、してはいけないことだと決めていたのに……それに、見たくないものまで見てしまう羽目になる。

----そう、例えば、彼のマンションを出て帰って行く女性の姿とか……そう、ユウさん。

 
 私は駅へと向かい、電車に揺られる----

 クリスマスの夜はまだまだ続いていて、私は愉快に騒ぐ人々の間をすり抜けてこの場所に来ていた。

 ここは、いつものライブハウス----遅くまで、クリスマスの催しが行われているみたい。

 聞いたことがあるバンドに知らないバンド、流れる音楽に聞き入ることもなく、私は一人お酒を飲みながらもう何時間もこの場所に入り浸っていた。

 22時を過ぎた頃、音は途絶え、飲み騒ぐ人の声がワイワイと騒がしい。

 人の声は耳に入って来て何とも煩わしい、音楽は私の邪魔をしないのに……


「ほんと、うるさい!」

「もう、大分、酔ったんじゃない?
 帰った方がいいよ」
 
「マスター、もう少しだけ

 いいでしょう?」


 カウンターに寝そべる私は、ぴったりと台に頬を寄せる----冷たい感触が気持ちいい。

 
「仕方ないね」


 その体勢で目を閉じる私に、聞こえる声。

 
「どうも」

「おう、何、今日出番じゃないでしょ
 というか終わったよ」

「近くで飲んでて顔出しただけ」