「ミカ、最後にこれだけは言っておく
 
 自己中に自由奔放に生きたいのなら
 誰かと、つるもうなどど思うな

 あの子の人生はおまえのものじゃない!
 引っ掻き回すのは、もうやめろ

 十分だろう、彼女とは別れろ」

「ほんと、うるさいったらない

 アニキ面しないでよ
 
 アンタは解雇、クビよ!」


 シッシッと手で追いやってみせる私に、王は言う。


「そりゃ有難い話だ、じゃあな」


 一人きり、静まり返った時の中で黙々と教室の片づけをしながら、私は遠い日のことを思い出す。


----ここは、とあるピアノ教室。

 普通の一軒家のお家の中でピアノを教わる幼い私は、久しぶりに父と共にこの扉を叩く。

 すると、扉は開かれ、そこにはとても美しい人が微笑みながら立っていた。


「ミカさん、こんにちは

 ダイさんもいらっしゃい」

「ハルちゃん、いつも済まないね
 無理を言って

 ミカがどうしてもハルコ先生じゃなきゃ
 嫌だと言ってきかなくてね
 
 困ったものだよ

 どうだい、その後、体の具合は?」

「今はもう……」

「そうか、それはよかった

 今度はカズも連れて来るよ」

「カズ君はもう、ここに来る
 年じゃないでしょう」

「ああ、そうか、そうだね」