『ユウ』----貴方の声に、ざわつく私の胸。

『ユウ』----私の声に、振り返ることのない貴女。


 突然、吹き荒れた風は、全てのものを一度にここへ運び、また全てのものをここからどこかへと連れて行く。

 そして、この場から呆気なく全てのものは消えた。

 教室から溢れ出んばかりの人々の姿は今はどこにもなく、ただ汚されるだけ汚されてボロボロになった教室が、ここにあるだけ。

 ただ、空しいだけの私が一人、ここに居る。

 荒らされた教室の後片付けをしている私に聞こえる足音、ユウさんかと思えば違った。


「王、あなただけ……

 わざわざ戻って来なくても
 良かったのに」


 立て付けが悪くなって、壊れてしまった扉に触れる手。

 
「すぐには直りそうもない

 無様なものだな、こんなにも荒れ果てて」

「楽器が無事で何よりだわ

 あんなにも大勢、来るかしら」


 当初の予定よりも大幅に超えた人の多さに、私はユウさんの人気の凄さを思い知らされるのだった。


「お嬢、君は何を考えてる

 生徒を使ってあんな小細工をして」