この場を離れるユウの姿を目で追う俺の視線に割り込んだ店員はテーブルにジョッキを置いた。


「ハイボール、お待ち」

「ありがとう」


 ジョッキのハイボールをガブガブ飲んでいたかと思うと、今度は飲む手を止めてボーッと一点、俺を見つめ真剣な表情になる、章。


「何、気分悪いの?」


「いや、違う

 ……

 なあ、いつ言うの?」


 塩をつけた鳥皮の焼き鳥を口に運ぶ途中の俺に章は問う。


「何を?

 ……

 ああ、しつこいね君も」

「おまえ、本気なのか、この間の話
 一生言わないってアレ?」

「ああ、言わない」

「はあ、言わずにいられるかねぇ」

「それなら自信ある」


 俺の返答に呆れ顔の章は、煙草に火をつけて一服すると溜め息交じりに重い口を開く。


「それは、ユウちゃんに全く
 男っ気が無いから言える話だろう
 
 今や彼女は人気者、言い寄ってくる男
 ならたくさん……」

「だから?」

「だからっておまえ
 誰かに取られてもいいのかよ」

「取られるって、俺のものじゃないよ」

「カナタ、おまえちゃんと考えろよ
 もうガキじゃねえんだから」

「熱くなるなよ

 いいよ」

「何が?」

「ユウが誰と付き合おうが俺は関係ない!」

「知らねえぞ

 言ってられるのも今のうちってな」


 章が言っていること、この俺自身もちゃんと理解できている。