ディモルフォセカの涙

 音楽教室が年末年始の休みに入った後も、実花さんは「すぐに戻る」と私に告げて、教室の空気を入れかえるために一人出掛けて行く。

 その為、短いけれど私は一人の時間を持てるようになった。

 でも、したいことが何ひとつ浮かばない----私のしたいことは、実花さんと料理をしたり、実花さんと映画を見たり、実花さんとショッピングをしたり……全て実花さんと一緒にしたいことばかり。

 ぼーっと、何もすることのない私は水回りの掃除を開始した。思い立ったら徹底的にやる!まずはキッチンから攻めて行こうとゴム手袋をする私はふと思う。

「掃除、あっちもしなきゃ」----自分の部屋の大掃除をする為に一度自宅に帰ろう。そう思ったその時、事務所から連絡が入った。

 ゴム手袋を外した手でスマホを持つ。お知らせは、毎年恒例の会社の忘年会を開くという内容だった。

 場所と時間はもう決定されていて、25日と言えばクリスマスではないの!よくこの間近に開催する場所が取れたものだ。

 忘年会----それには出席しないという選択肢は無く。

 実花さんと二人で過ごそうと決めたクリスマス、実花さんに何と言えばいいものか……こればかりは仕方がない!真心を込めてしっかりと謝ろう。


「ユウ、クリスマスは一緒に過ごそうね」----あんなにも楽しみにしてたのに、ガッカリさせてしまうだろうなぁ。